レースのために − From Race to Race −

ロードバイクは、コンポーネントなどの多くパーツから構成される非常に複雑なシステムで成り立っています。そして発揮される性能は、その組み合わせによって常にトレードオフの関係にあり、新しいロードバイクの開発は並大抵の作業ではありません。特に、トップレベルのチームへ供給するバイクとなると一切の妥協は許されず、求められる性能は非常に高いものでした。そこで我々は、UAEチームエミレーツのプロ選手たちと開発を共にし、多くのテストと実戦での最終的な検証を経て「V4Rs」を誕生させました。

パフォーマンスの進化

V4Rsは5つの領域で進化を遂げています。

■ エアロダイナミクス
軽量性
動的剛性
ジオメトリ
堅牢性と信頼性

そして、4つの段階を経て開発されました。

■ コンセプト設計とデザイン
■ プロトタイプ開発
■ 開発テストと再設計
■ レース条件下での最終検証

特に実際のレースでの検証はV4Rsに大きな進化をもたらしました。システム全体をレースという極限の条件でテストすることで、パーツごとの性能によってではなく、すべてのシステムが一体となって性能を発揮するロードバイクが完成しました。

「エアロダイナミクス」

V4Rsは、全体が統合された1つのシステムとして構想されています。エアロダイナミクスを考える上で、パーツごとの設計では意味を成しません。空気の抵抗を低減するためには、ロードバイク全体を1つの物質として考え、検証する必要があります。

そしてこの考えによる設計と開発のプロセスは、ロードバイク全体にかかるドラグ(抗力)に大きく影響するフロント部分から始まりました。様々なCD値(抗力係数)を検証し、V4Rsのフロントデザインは最適化されました。

式1:抗力の計算式

V4Rsは、フロントデザインを最適化するための改良が加えられています。その結果、フロント周りの形状はコンパクトになり、ドラグ(抗力)を低減しエアロダイナミクスが向上するデザインが完成しました。

・トップチューブ
フォークまでが流線形でつながるスマートな形状に変更され一体感が高まることで、正しい空気の流れを作り出します。

・フォーク
新しいフォーク形状となり、軽量化されました。タイヤクリアランスは、メーカーにも依りますが最大32mmに対応します。

・コクピットデザイン
ヘッドセットのアッパーベアリングを大型化することで、従来のD型コラムなしでケーブルの内装化ができ、強度と安定性が大幅に向上しました。

COLNAGO CC.01

モノコック成形された新しいハンドルバー「COLNAGO CC.01」を使用することで、V3Rsに搭載されたコクピットと比較して、剛性を落とさずに空気抵抗面が最大16%削減されます。NACA(アメリカ航空諮問委員会)による翼型デザイン(NACA airfoil)は、層流(圧力分布が一定の空気の流れ)を生み出し、効率よく安定した空力特性を作り出します。

CC.01装着時(一部サードパーティとの互換性も確保されている)
Wahoo Bolt V2のサイコンに対応した専用マウントもあり、50km/hで0.75Wを低減できる (近日発売予定)

風洞テストによるデータ検証

テストは実際のレースを想定し、ヘッドユニットと2つのボトルゲージ、1つのボトルを装着した状態で行われた

風洞テストでは、エアロダイナミクス検証のためにさまざまな条件で検証が実施されました。そして下記のグラフの通り、V4Rsはあらゆるヨー角でV3Rsに比べSCx(抵抗値)が低減されています。

グラフ1:レース用セッティングで、バイク単体での検証(ヘッドユニット、ボトルゲージ2個、ボトル1個を装備)

すべてのデータを風速50km/hで測定
無風時、50km/hでペダリングした時の比較

※WHEEL A:基準となるホールで、V3RsとV4Rsで同一のものを使用。
※WHEEL B:様々なホイールでV4Rsの空力特性の検証を行い、最適な結果を得られたホールを使用。
※赤線と橙線:V3Rs(赤)とV4Rs(橙)との比較(WHEEL A使用)
青線と紫線:V4Rsを使用し、ヘッドユニットの違いを比較。紫がCC.01使用時。(WHEEL B使用)
※ヨー角:風の入射角度。0°であれば車体の進行方向からの向かい風となる。ロードバイクで一般的な条件は0°〜12.5°となる。
※WAD=加重平均抗力 さまざまなヨー角での効力を考慮に入れ、各条件で発生する確率で重みづけされる。(角度が小さいほど重み付けが大きくなる。)

グラフ2:レース用セッティングでの検証(ケイデンス90rpm、ヘッドユニット、ボトルゲージ2個、ボトル1個)

ライダーを使用したレース用セッティングのテストでは、可能な限り屋外に近い条件でテストするために一定のrpmでペダリングしています。上記の結果は、ばらつきを抑えるために各セットアップで3回の計測を行い、平均値を取得しました。

これらの結果からV4RsはColnago CC.01と組み合わせることで、さらなるエアロダイナミクスを実現し、90rpmで50km/hでペダルを漕いだ場合、V3Rs Discと比較して27.7Wを低減することができます。

「軽量性」

V3Rs(500S)とV4Rs(485)の重量比較

すでにレースに向けて軽量化が行われていたV3Rsに対し、さらなる軽量化を行うことはV4Rsへの進化において最も困難な課題の一つでした。しかしシステム全体、つまりフレーム、フォーク、ヘッドセット、ハンドルバーの総重量を比較しトータルで47gが軽量化されています。

※Ready-to-paint frame:未塗装のフレームのみ
 Total frame-kit weight:塗装済みのフレームとフォーク
 Total frame module:
 V3Rs フレームキット + SR9 + R41 Handle bar+ Head set / V4RS frame-kit + CC.01 Handle bar+ Head set

カラーをマットフィニッシュにすることで、グロス仕様と比較して200g軽減される

「動的剛性」

走行中、ロードバイク全体にはさまざまな負荷が同時にかかります。その負荷を正確に計算するためCOLNAGOのエンジニアは、実験室などの静的な測定と、実際のサイクリング時の動的な測定を組み合わせた剛性測定を開発しました。この新しい手法は、屋内環境化で静的・動的剛性を測定することができ、さらに、曲げやねじれ負荷に対しても測定ができます。その結果をもとに、V4Rsはあらゆるパーツの剛性調整を行いました。そしてあらゆる極限の条件が課せられるレースという状況で、最高のパフォーマンスを発揮できるロードバイクに仕上がりました。

ドイツの第三者検査機関であるZEDLER FAHRRADTECHNIK社によるテストでも、V3Rsとの比較が証明されています。

UAEチームとの共同開発

V4Rsは多くのテストや測定、開発が行われ、UAEチームのプロ選手によって検証されて誕生しました。

タデイ・ポガチャル選手

「立ち上がりから実感できるくらいV4Rsの方が剛性に優れ、レスポンスもいいですね。アタックやスプリントでの攻撃力が明らかに高くなっています。」

DAVID HERRERO LLORENTE(UAEチーム・エミレーツ バイオメカニクス責任者)

「次のシーズンに向けて新しいバイクのためにエアロダイナミクスや重量、剛性のテストをいくつも実施しました。V4RsはV3Rsよりもはるかに空力特性が高く、軽量で剛性も上がっています。UCIワールドツアーで最高のロードバイクが活躍すると思います。」

RDS −Real-Dynamic Stiffness−

ロードバイクへの負荷は、シッティングやスプリントなどのポジションによって変わります。ライド時のポジション変化による負荷に対応するロードバイクの剛性をRDS(Real-Dynamic Stiffness)と定義し、複数の負荷条件で測定し、プロトタイプで比較検証を行いました。

V3RsとV4Rsのポジションによる剛性比較(いずれの場合も、剛性が増している)

SP:スプリントポジション
曲げやねじれ負荷をシミュレートするため、ハンドルバーとボトムブラケットの両方へ垂直方向の振動負荷をかけて計測。

ST:シッティングポジション
幅広いシチュエーションを再現するため、フロントトライアングルに平面的に負荷をかけて計測。

スプリント

スプリントポジションでは、ライダーがペダルに力を加えると、ペダルへの負荷はバイクの中心線から外れます。さらに、腕でハンドルバーを引っ張ったり押したりすることにより、ロードバイクのフロント部分に多くの負荷がかかります。

シッティングポジション

ロードバイクに座った状態では、腕にかかる負担は軽く、リア三角にほとんどの重量がかかります。この荷重の偏りは急な上り坂で、さらに座ってロードバイクを漕ぐ場合にはさらに顕著になります。

パヴェ(石畳)

起伏の多い地形の場合、地面から両輪に激しい衝撃が発生します。この衝撃は、サイクリストの体重やペダルの踏み込みなどとも組み合わさってロードバイクに負荷がかかります。

剛性を高めるレースで実証済みの革新的なカーボンレイアップ

究極のレーシングマシンにたどり着くために、これらの多くの異なる条件で剛性マトリックスを開発し、テスト、検証しました。そして、最終的に最も厳しい条件でテストするために、最も有望なレイアップを備えたプロトタイプ「PROTITIPO」がTDF2022に持ち込まれました。スプリント、上り坂、下り坂などレースのあらゆる状況を記録し、エンジニアにフィードバックされました。これらのデータを検証し、V4Rsには革新的なカーボンレイアップが採用されました。

「ジオメトリ」

プロ選手のフィードバックを得て、ジオメトリが改良されました。特に、リーチとスタックハイトが見直されており、全てのサイズでバランス良くパフォーマンスが発揮できるように調整されています。

シートチューブ長とリーチの関係がほぼ同一となり、より簡単に正確なサイズ選択ができます。またサドル位置の調整によるポジション・チューニングの可能性の幅が広がりました。

さらに、リーチ/スタックハイト比を全サイズで共通して最適化したことで、チェーンステーは短縮されています。このジオメトリによって、バランスが良くなり、パワー伝達が向上しました。どのサイズでもCOLNAGOのレーシングフィールを体感することができます。

「堅牢性と信頼性」

ロードバイクの堅牢性は、グランツールのような3週間におよぶレースだけでなく、クラシックレースのような長距離ワンデイレースにおいても重要です。V4Rsは、レースで衝撃を受ける可能性の高い、露出しているパーツの衝撃耐性を強化しました。

例えば、新しく設計されたシートステーが挙げられます。よりエアロダイナミクスの高い形状に加え、曲げ耐性と耐衝撃性を大幅に改善するために、V3Rsと比較して結合部をシートチューブのより低い位置に設置しました。また後ろ三角の形状も変更されています。

そして、これらの堅牢性の強化により、メンテナンスの必要性も最小限に抑えられます。COLNAGOは信頼性の高さとは、メンテナンスの必要性の低さに直結すると考えます。一例として、セラミックスピード社のヘッドセットの採用です。このヘッドセットは、独自の固体ポリマーとステンレス鋼コンポーネントを備えたSLT技術(固体潤滑技術)を備えており、汚れの侵入による潤滑性の低下や、グリースの劣化を防ぎます。

Built to Win −勝利のために−

すべてのパーツが見直され、大きく進化した「V4Rs」。TDFで2連覇を成し遂げ、すでに完成されていたV3Rsからの進化は非常に困難なものでした。しかし、多くのテストやデータ検証を経て、UEAチームと協力して開発した結果、あらゆる地形で優れた性能を発揮する史上最速のモノコックフレームが誕生しました。V4Rsは、コルナゴの「V」を継承する、勝つためのロードバイクです。来シーズンからチームへの投入も決まっており、このロードバイクを駆る選手たちに多くの勝利をもたらすことでしょう。

バイクスペックなどの詳細は、プロダクトページをご覧ください。
V4Rsプロダクトページ

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